「仕事も順調だし、収入も増えてきた。なのに、なぜか幸せじゃない感じがして……」
そう言いながら私のところへやってきたのは、起業して3年目の40代のSさんだった。目標にしていた月収を達成した、念願の独立もできた、客観的に見れば「うまくいっている」はずなのに充実感がない、むしろ以前より孤独を感じている
——「自分は何のために頑張っているのかわからなくなってきた」と話してくれた。だから私は、こう聞いた。
「Sさん、あなたにとって、幸せって何ですか?」
しばらく沈黙があってから、「……考えたことがなかったかもしれません」と答えた。
「そこが、すべての出発点です」
Sさんに最初に伝えたのは、幸せになるための具体的なワークだった。
①まず、自分にとっての素晴らしい1日のスケジュールを作ること。
朝何時に起きて、何を食べて、誰と会って、何をして、夜どう過ごすか
——理想の1日を具体的に書き出す。ぼんやりとした「幸せになりたい」を、リアルなイメージに変換する作業だ。
②次に、次の休日にそのスケジュール通りの1日を実際に過ごすこと。
仕事のこと、将来の不安、いつも気にしていること
——それらを一旦脇に置いて、書き出した理想の1日を生きてみる。快楽を満喫して、精神を充実させる。これを意識的に体験することで、楽しい人生の質が高まっていく。
③そしてもう一つ、目を閉じて感謝を伝えられていない誰かを思い浮かべてほしい。
あなたの人生を良い方向に変えてくれた、非常に重要なことをしてくれた、なのにちゃんと感謝を伝えられていない誰か
——今も生きている人に限る。その人に300語の感謝状を書いて、なぜかは言わずに訪ねてよいか連絡する。そして実際に訪ねて、感謝状を読んでほしい。ほとんどの人がその時に涙を流す。
このステップを1週間後、1ヶ月後、3ヶ月後に繰り返してテストすると、人はより幸せになり、うつ状態も改善されるという研究結果がある。
「収入が増えたら幸せになれると思っていたんですが……」とSさんは言った。
ポジティブ心理学を提唱するスタンフォードのある教授が、世界中でどんな条件があると幸福になるかを調査した結果、経済的条件と幸福度の関係は年収700万円から先はそれほど変化しなかったそうだ。世界の富豪たちの中にも自分が不幸だと感じている人が多くいた一方、富豪の中でもとにかく「幸せだ」と感じている人も多くいた。住環境、経済環境、学習環境
——あらゆる分野でリサーチが行われた結果、「幸せには数えきれないくらいの形がある」ことがわかった。でも、たった一つだけ、すべての幸せな人に共通している項目があったそうだ。
それは「つながり(愛)」があるかどうかだ。
大切なパートナーがいる、大切な仲間がいる、親友がいる、心から「つながっている」と感じられる素晴らしい友人がいるかどうか
——これがとにかく幸福度に影響する。
実はこれは、大昔にお釈迦様も言っていたことだ。あるお釈迦様の弟子・アーナンダが「頭が良くて自分を指導してくれる仲の良い友人がいれば、人生の半分は達成できるんじゃないか」と考え、お釈迦様に話した。するとお釈迦様はこう答えた。「それは違う。人生は、善い友に巡り会えたならば完全に成功だ。半分じゃない、全部だ」と。
ポジティブ心理学によると、人間関係を大事にする人は成功する。逆に、ネガティブな影響を与える人とつきあい続けると、うまくいかなくなる。人間は必ず他人の影響を受けるから、誰とつきあうかを真剣に考えることは、人生における最も重要な判断の一つだ。今自分が生きている環境を観察してみると、自分の将来が見えてくる。周りに幸福度の高い人がいるかどうか、切磋琢磨できる仲間がいるかどうか
——それが3年後、5年後のあなたの姿に直結している。
Sさんは「独立してから、一人で仕事をすることが多くなって、深くつながっている友人がいないかもしれません」と静かに言った。「だからかもしれませんね」と私は伝えた。
もう一つ、幸福度が圧倒的に高い生き方がある。「自分より大きな何かのために人生を捧げる生き方」だ。
待機児童を一人でも減らすために究極の保育園をつくる、孤独死をなくすために高齢者のコミュニティをつくる、世界のリーダーを育てるスクールを立ち上げる、水問題を解決するために活動する
——向かうべき道は人それぞれだ。でもその道に向かっている人は総じて圧倒的に幸福度が高い。目の前の利益や自分の感情を超えた「意味」を持って生きているからだ。自分のためだけに頑張っている時には感じられない充実感が、誰かのために動いている時には自然と生まれてくる。
そして最後に、Sさんに伝えた大切なことがある。
「幸せになる技術」と「不幸を取り除く技術」は別物だ。
現状の不満がなくなったら幸せになれるとは限らない。「お金がないから不幸せだ、だからお金を手に入れたら幸せになれる」というのは違う。Sさんがまさにそれを体験していた。不幸の原因を取り除くことはできる。でもそこに幸せが自動的に生まれるわけではない。幸せは、積極的に作り出すものだ。
自分にとって最高の1日を過ごして大切な人に感謝を伝えること、善友を持ち幸福度の高い人とつながること、志を持って「誰かのための」という道を進むこと
——この3つを意識してほしい。
Sさんは3ヶ月後、「学生時代の親友に久しぶりに連絡して、会いに行きました。それだけで、仕事の調子が戻ってきた気がします。不思議ですね」と報告してくれた。
あなたにとっての「幸せ」とは、何だろうか。今日、じっくり考えてみてほしい。その答えが見つかった時、あなたの歩む道が変わり始める。


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