「お客さんとの商談で、いつも『検討します』で終わってしまうんです」
そう言いながら私のところへやってきたのは、保険の営業をしている40代のIさんだった。話す内容は準備している、商品の説明も丁寧にしている、でもなぜか相手の心が動かない、「いい話ですね」と言われても最後に「また連絡します」で終わる
——その繰り返しが続いていると話してくれた。だから私は、こう聞いた。
「Iさん、商談の中で、相手の感情を動かすことを意識していますか?」
「感情……ですか?」
「そうです。人は理屈で動きません。感情で動きます。今日はその方法をお伝えします」
相手を動かしたければ、まず相手の感情を動かすこと
——これは私がクライアントに繰り返し伝えていることだ。ビジネスでも人間関係でも、「自分の株を上げて相手にすごいと思わせよう」とするアプローチは逆効果だ。
相手が求めているのは、あなたがすごいかどうかではなく、「あなたといると心地いい」「あなたと関わると未来がよくなる」という感覚だからだ。恋愛で言えば、口説くということは自分の魅力をアピールすることではなく、相手を「この人といると、なんだかドキドキする」という心理状態に自然と導くことだ。これはビジネスでもまったく同じだ。
ステップ1「相手を『分かって』褒める」
相手と会う時は、常に相手のことを褒めること。褒められて嫌な人はいない。ただし、表面的な褒め言葉よりはるかに強力な方法がある。それは、相手の二面性を見抜いて褒めることだ。
人間は誰でも、外から見えている顔と、内側に持っている別の顔がある。その隠れた側面を言い当てられると、相手は「この人は自分のことを本当に分かってくれている」と感じて、一気に心を開く。
- いつも笑顔で社交的な人には「社交的に見えるから周りから好かれていると思うけど、実は気を使いすぎて疲れることもあるんじゃないですか?」と伝えてみる。
- クールで何でも一人でこなしそうな人には「見た目は独立心が強そうだけど、本当は誰かに頼りたい時もありますよね」と伝えてみる。
ほとんどの場合、相手はドキっとする。「なんで分かるんですか?」という反応が返ってくる。これを「コールドリーディング」と言う。誰にでも当てはまる二面性を的確に言葉にすることで、「この人は自分を理解してくれる」という信頼感が生まれる。あなたと会うたびに「分かってもらえる」体験が重なると、相手の潜在意識に「あなたと会う=心地いい」という条件反射が育っていく。
ステップ2「相手の頭の中にリアルなイメージを描かせる」
「小さな子犬」と言われるより、「柔らかい毛が気持ちいい、小さな声でキャン!と鳴く、淡いクリーム色の小さな可愛い子犬」と言われた方が、ずっとリアルに想像できる。人間の脳は、実際の体験とリアルなイメージをあまり区別できない。だから相手の頭にいいイメージを描かせることができれば、実際にそれを体験したのに近い感情が生まれる。
「今度、打ち合わせしませんか?」と誘うのと、「今度、打ち合わせしませんか?先日Iさんのお話を聞いて、こんな提案ができそうだと思っていて。あの課題が解決されたら、毎月の業務がかなり楽になりますよね。しかも、そこから派生してこういう可能性も出てきて……一緒にそのイメージを具体化してみたいんです」と伝えるのとでは、相手の心の動き方がまったく違う。後者は相手に「もし実現したら」という未来のイメージを描かせている。そのイメージが魅力的であれば、相手は自然と「会ってみよう」という気持ちになる。
ステップ3「相手の未来に自分を登場させる」
「今後、どんなビジネスをしていきたいですか?」「3年後、どんな状態になっていたいですか?」と相手に語ってもらう。
そして相手が語ってくれた未来に対して、自分がどう役に立てるかをリアルに描いて伝える。「その目標を達成する時に、こういう部分で一緒に動けそうですね」「その状態になるためには、ここを先に整えると近道になりますよ」
——相手の未来の絵の中に、自然とあなたが登場している。この状態になると、相手の中で「この人と関わり続けたい」という動機が生まれる。お客さんとの関係でも、仕事のパートナーとの関係でも、まったく同じだ。
Iさんにこの3つのステップを伝えた後、こう言った。「次の商談で、まず相手の二面性を一つだけ言い当ててみてください。そして相手の3年後の理想の状態を聞いて、そこに自分のサービスがどう貢献できるかをリアルに語ってみてください」
2週間後、Iさんから報告が届いた。「お客さんに『見た目はしっかりしているから周りからは頼られていそうだけど、実は内心プレッシャーを感じていることが多いんじゃないですか?』と言ったら、すごく驚かれて、そこからお客さんが自分の悩みをたくさん話してくれるようになりました。最後に、その悩みが解消された3年後のイメージを一緒に描いたら、『ぜひお願いしたい』という流れになりました」と、声に確かな手応えがあった。
理屈で説明するより、感情を動かすこと。相手を分かること。相手の未来に自分を登場させること。この3つを意識するだけで、人を動かす力は圧倒的に変わっていく。
人の心を動かす技術は、恋愛でもビジネスでも、根っこはまったく同じだ。相手の感情を理解して、相手の未来に本気で関わること。すべての道は「人の心」に続いている。


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